通勤電車で親切にしてくれた男性に、もう一度会いたくて……
10代の頃からスピリチュアルな世界が好きでした。自分でお金を稼ぐようになってから、鑑定料が高めの電話占いなどもたまに利用していたのですが、本物のイタコと電話で話したのは今回が初めての体験です。最初にその存在を知ったのは、今から1年くらい前でしょうか。女性雑誌の広告記事に、「青森のイタコカミサマに師事して正式な修行を修めた一流霊媒が、恋愛や結婚の悩み相談に乗る」と書かれており、一体どんな感じで鑑定を進めるのかな?と好奇心が湧きました。でも、当時はひいきにしているタロット占い師がいたので、あえて他の先生にお金を使おうとは思わなかったのです。
そんな私が、どうして恵日先生の鑑定を受けたのか。きっかけは朝の通勤途中に起きた出来事でした。私は毎朝、埼玉県内の駅から決まった時間の電車に乗って都内の会社に通勤しているのですが、その日は何かの原因でダイヤが大きく乱れていたようで、ホームは大勢の人でごった返していました。いつものように真ん中くらいの車両に乗りたいと思って歩き出したものの、余りに人が多すぎて途中で行くも進むもできなくなりました。そこへちょうど定刻遅れの電車が入り、人波に流されるまま車内へ乗り込んだのですが、当然そこの空間もすし詰め状態。そしていつも乗り換え客が多い途中駅に着いた時にそれは起きました。
乗客の一群が開いたドアへ流れ出したとたん、手にしていたバックも引っ張られ、そのまま手を離れてしまったのです。「すみません!お願い!」と何度も叫んだのですが、誰も気付いてはくれませんでした。私のバッグは人と人の間に挟まれたまま電車の外まで出てしまったようで、夢中になって後を追うと、そこに1人の男性が立っていたのです。ホームと電車の間に落ちかけていた女物のバッグを、とっさに掴み取って目を丸くしていました。「あの、これどなたのですか?」大声で叫んだ男性に向かって、「私のですっ!」とすかさず手を挙げました……。
「つまり、その男性ともう一度会いたい、というわけですね」、数日後に申し込んだ鑑定で恵日先生にそう問われ、私は素直にうなずきました。「その後、その人とはしばらく同じ車両に乗っていたのですが、お礼の言葉を一言だけ言ったきりで、それ以上は気恥ずかしくて話し掛けることができませんでした。そのうちに向こうが先に降りてそれっきりです。雲を掴むような話でごめんなさい」「そんなことはありません。よほど印象深い人だったのですね」「ええ、なぜだか忘れられないんです」「大丈夫。通勤通学の途中で出会った名前も知らない相手のことを知りたい、もう一度会ってみたいとおっしゃるお客様は案外と多いんですよ。イタコは霊を降ろすだけではなくて、行方不明の人探しもするということを知った方が、何とかならないかとお電話されるみたいです」
それから先生は少し沈黙し、電話の向こうで何事か納得している様子でした。そして「その男性、あなたが昔、好きだった相手に似ているのでしょう?」と、核心を突いた言葉を投げかけられたのです。「先生、どうしてそんなことまで分かるんですか」「今、あなたの過去の記憶が私の頭へ流れ込んでいるんですよ。好きだった相手は高校時代の同級生ですよね。バスケットかバレーボールの部活に入っていて、あなたはよく彼が出場する練習試合を応援に行っていましたね」。
そんな話を聞くうちに、あまりに懐かしくて涙が出てきました。もちろん、過去透視の内容は全て当たっていました。この先生なら必ず探してくれる!そう確信した瞬間でした。そして、ほどなくして最終的な答えが出ました。「探しておられる男性が見えました。この人、普段はその路線は使っていないようです。だから通勤途中で再会することができなかったんですね。彼、いつもは▲▲線で通勤しているはずです。そして降りる駅は■■……」それはあまりにも具体的な情報でした。男性がいつも使っている路線名や通勤の時間帯、さらにはその電車のどのあたりの車両に乗るのかといったことまで詳しく教えてくれたのです。「こちらは見えている通りをお伝えしているだけなので、もし、間違っていたらごめんなさい。でも今回は細かいところもかなり鮮明に見えているので、十分に期待できると思いますよ」。こちらは言われるまでもなく、その透視力に圧倒されていましたので、頭から信じて行動に移しました。
翌週の月曜日、いつもよりかなり早起きをして家を飛び出し、先生が言っていた男性の降りる駅で張り込みをしました。すると本当にその姿を見つけることができたのです!偶然を装って彼の前に立つと向こうも私のことを憶えてくれていたらしく、びっくりした表情を浮かべていました。思い切ってこちらから声を掛け、ホームの隅で慌ただしく名刺交換。そして当日のうちに電話連絡をもらいました。彼の勤める会社は私の勤め先からかなり離れたエリアにあったのですが、退社後、わざわざこちらの乗降駅まで出向いてきてくれて、近くのカフェでお茶をしたんです。想像していた通り、本当に素敵な男性でした。このままお付き合いしたいと思いましたが、さすがにそれを言葉には出せなくて、その日は大人しくお茶だけで別れました。先生の霊視によれば彼には今、決まった恋人はいないそうなので、あらためて鑑定を申込み、今度は恋愛成就のアドバイスをいただきます!
(常田真優梨さん 27歳 埼玉県吉川市)