初めて知った自分の能力
イタコ自身が語るその半生 第二章
そしてちょうど中学2年の終わり頃、私に転機が訪れたのでした。なんと申しますか、よくある話ではございますが私は初恋を経験したのです。今でこそ普通にありますが、当時の私が通っていたのは私の住んでいた地方では珍しい中高一貫教育の学校で、そこの2歳年上のテニス先輩に憧れにも似た気持ちから始まり、いつしか恋心になっていった次第であります。やがてその恋は実を結び、私はそれからおよそ1年の間、ウキウキと楽しい学生生活を送っていたのです。
しかしある日のことです。急に目の奥がチクッと、さらにはキーンと電気が走ったかのような感覚に襲われたのでした。こんなことは初めてで、少しパニック気味になったそのとき、刺すような痛みを感じたのとともに、頭の中に淡い映像がボンヤリと浮かんできたのです。確かに鮮明ではありませんでしたが、そこに映っていた人物が彼だというのは間違いようもありません。そして彼が誰となにをしていたのかもすべて映像として見えてしまったのでした。
その光景が見えたのは、時間にして僅か3分にも満たなかったでしょうか。しかしそのときの私には、それが何十分間いや何時間にも思えたのです。なぜなら見えた光景の中では、かなりの時間が進んでいる様子だったのですから。彼は浮気をしているのだろうか、私は嫌われたのだろうか、私はただ遊ばれていただけのだろうか、あるいは今見えた光景は単なる私の不安が見せた妄想なのか……。なまじ色々と先のことを感じ取れるようになっていた私は、その映像を見て頭が真っ白になり、顔を伝うのは汗なのか涙なのか、手でぬぐうのさえわずらわしい心持ちでした。
しかしそれからも私は、何事もない、何も知らないと装いながら彼と付き合い続けました。しかしある日の学校からの帰り道、ふとしたことで始まったケンカの最中にどうにも耐え難く、私はそのことをつい口にしたのでした。そのときの彼が見せた驚愕の表情は、今でも忘れたことがありません。
「なぜそれを……」絶句した彼をその場に残し、私は背中を向けて駆け出しました。目の前がいつもより曇って見えたのは、厚底メガネのせいばかりではありませんでした。
その初恋の結末をあえて語る必要は無いでしょう。結局どんな形でその初恋が終わりを迎えたか、それも今となっては少しの恥ずかしさもあり、皆様のご想像にお任せするとして控えさせていただきましょう。どうかご勘弁を(笑)。
その日から私は目に見えて生きる活力や気力を失い、将来に悲観ばかりしていました。そしてそんな失恋話を母に話したとき、私の人生が一気に決定されたとも言えます。
(※以上の文章は、一部加筆修正の上で掲載しております。)