恋人を探し三十年彷徨い続けた悲しき不浄霊
霊能者が語る心霊体験(6)
高比良先生
数年前のことなのですが、リフレッシュを兼ねて旅行にでかけたのです。まだできて間もない旅館に泊まったのですが、部屋に入ったとたん強い視線を感じました。けれどもその視線はとても寂しげで、私に対して何か言いたそうな感じを受けたのです。
案の定、夜になるとその霊が私に近づいてきました。部屋に入った時は視線だけしか感じませんでしたが、夜には女性の姿がはっきりと見えるようになったのです。女性は20代中頃のように見えました。私はすぐに、女性の霊と直接話してみることにしたのです。対話によって、いろいろと状況がわかってきました。
実はこの旅館が立つ前、この地で事故に遭い亡くなった方の霊だったのです。亡くなってから、すでに30年近く経っているようでした。その時、恋人と一緒に事故に遭ったのですが、恋人は一命を取りとめました。彼女はその後、30年近くにわたりこの地を彷徨い続け、恋人を探しているのです。彼女はまだ自分が亡くなったことに気づいていないようで、ひたすら「恋人に会いたい」と私に訴えかけてきました。自分が亡くなったことにも気づかず、このまま成仏できずにいるのはいたたまれなかったので、私は彼女の霊を浄霊することにしました。
まずは彼女の魂がこの世のものではないということを、言い聞かせることからはじめました。それと同時に、事故からすでに30年近く経っていることも伝えたのです。彼女はなかなか納得しませんでしたが、丁寧に状況を説明していくうちに、状況がわかってきたようです。私はさらに、このままここで彷徨い続けていても恋人の魂に会うことはできないということ、成仏をすれば再び相手の魂と繋がることができるということを説いていったのです。
30分くらい彼女の魂と対話していたでしょうか。ようやく納得してくれたようで、彼女の魂は成仏していきました。その瞬間、私の周りに何とも言えない良い香りが漂ってきたのです。彼女なりの感謝の気持ちを示してくれたのでしょう。偶然の出会いではありましたが、こうやってひとつの魂を成仏させることができて、とても良かったと思っています。