呪われた土地
第2話
青森の地を離れ、関西の某都市で占い師として生計を立てていた頃のこと。「幽霊が出る」というマンションの部屋を鑑定。部屋にいたのは力の弱い低級霊だったが、霊障を引き起こしていた原因は“土地”にあった……。
天啓に所属する数年前のお話
当時、私は個人で鑑定活動を行っておりました。師匠である老イタコの先生があの世に旅立ってから、私は青森の地を離れました。そして修行の一環として全国各地を放浪した末、関西の某都市で占い師として生計を立てていました。最初は日々の生活にも難儀するような暮らしでしたが、降霊による霊媒鑑定が少しずつご好評をいただき、さまざまな方から鑑定依頼がやってくるようになりました。
そんなある日のこと。とある方から「部屋に幽霊が出るかもしれない」とご相談をいただきました。なんでも、引っ越し先のマンションの部屋のひとつから妙な物音がするそうです。2階の角部屋で間取りは2LDK。築4年という新しい建物でした。しかし、そのうちの一部屋から、誰かがゆっくり這いずり回るような、ズルッ、ズルッという音が聞こえてくるとのことでした。不動産屋に問い合わせてみたそうですが、「過去に事故や事件の類は一切起こっていない」と言われたそうです。
マンション全体に漂う嫌な雰囲気
ご依頼を受け、そのマンションに向かうと、やはりと言いますか、“嫌な雰囲気”がしました。しかし特徴的だったのは、その“嫌な雰囲気”が件の部屋ではなく、マンション全体から漂っているところでした。ごく普通の住宅街の一角なのですが、その場所全体がまるで心霊スポットのようになっているのです。
実際、霊の物音がするというお部屋にもお邪魔させていただき、そこに霊が住み着いているのを確認しました。しかし物音を立てていたのは力の弱い不浄霊で、簡単な除霊のまじないをするだけで、あっけないほどすぐに退散していきました。
しかし霊を祓っても“嫌な雰囲気”はまったく消えません。これは部屋ではなく土地に因縁があるのかもしれない。そう思い、私は霊感を働かせ真相の究明に乗り出しました。
瞳を閉じて神経を集中させると、そのマンション全体をどす黒いモヤのようなものが取り囲んでいるのを感じます。どす黒いモヤは渦を巻き、辺りにいる力の弱い不浄霊を何十体も取り込み、台風のようになっていました。そして、渦の中心にあるのはマンションの一階にある某部屋。正確にいうと、その部屋の下にある地面でした。
あまりの瘴気に意識を集中させることすら躊躇われましたが、思い切って集中させてみました。
殺されて埋められた赤子の霊達
突如、頭の中に「オギャア、オギャア」という赤子の泣き声がいくつも響き渡りました。呪いの中心に意識を集中させたところ、声が聴こえてきたのです。私は事態の真相を察しました。
このマンションが建てられるより前、この土地で何かとてつもなく不吉なことが起きた。おそらく赤子が数人ほど殺されて埋められた。その結果、土地自体が呪われてしまった。ゆっくり這い回る「ズルッ、ズルッ」という物音は、殺された赤子の霊が辺りを這い回る音だったのです。
これはもう霊能者ひとりの力でどうにかできるものではありません。私は、ご依頼者様に全てを話すことにしました。
「マンションの部屋には特にこれといった因縁がありません。しかし土地自体が呪われています。この呪いはとても根深く、霊能者ひとりにはどうにもならないものですので、引っ越されることをお勧めします」とお伝えしました。
その後、ご依頼者様はすぐにマンションを引き払い、引っ越されたそうです。