本当にいた狐憑き
第18話
わたしがまだ30歳前の話です。ある夜、仕事関係者から電話があり「すぐ来て!」と。ピンと○○ちゃんの顔が浮かびました。○○ちゃん、というのはまだ20歳の女性で、結婚出産し、一児の母になった方でした。結婚相手というのがわたしの仕事関係者で、前妻との間に子どもが8人、計画性が無く、仕事面でもミスばかりのような人物。ですので低級霊を這わせ、早く縁切りしたい人でした。邪霊以外は重々承知で○○ちゃんは結婚し、さっそく子どもを1人授かりました。
実はその方には他にも問題がありました。外で違う女性と交際していたのです。その結果、彼の寄り道先には必ず○○ちゃんと赤ちゃん、さらに母親が同行、浮気防止です。それから1年ほど経った頃です、わたしが夜中に電話をもらったのは。
光景は修羅場、しかしその心の中はもっとひどい状態に
夜中に車を飛ばし駆けつけると、なんと、アパート2階の窓が割れており、駐車しようと思った駐車場には電子レンジが転がっていました。そこに悲鳴が聞こえてきたのです。ピンポンもせずドアを開けると、キッチンには陶器が割れ散在、テーブルもイスも壁に投げつけられ、ミキサーやオーブンがあらぬ方向に飛び破損。
○○ちゃんの聴き取れぬ喚き声、振り回す包丁。わたしは用意していった塩を彼女に向って叩き付け、包丁が落ちた瞬間に彼女の眉間に塩を塗り込み念仏を唱えました。彼女の体がガクンと落ち、夫と上司で抑え込みましたが、彼女はものすごい形相のままで夫に噛みつき、床には血が……。
それが数分だったのか10分だったのか、彼女は急に眠りに落ち、母親が到着。わたしはその母親を見た瞬間、邪気を感じました。中身が狂っている、取り繕っているだけのケモノ。しかし、その晩は暴れ疲れた娘をその母親が実家に連れて帰りました。
彼女の実家は裕福で、壊れた窓、壁、電化製品等すべて元通り、何もなかったかのように取り繕われ、彼女は、というと、実家に数日滞在し、夫も一緒に。彼女と母親はある宗教に入っており、彼も入会させられたそうです。母親が言うには「あなたがちゃんと信仰しないからいけないのよ」。
徐々にひどくなる霊障
数日後、惨劇のアパートに帰るも彼女は家事もせず、子どもは母親の預かりに。さらに数日後、親子が職場に現れ、彼女は部屋に入るなり目線をウロウロ。いきなり「この男と付き合っているのは誰だよ!」と叫び、それからケラケラ笑い始め、出したお茶菓子をガバガバと口に入れ、パーティションの柵をガリガリかじり「こいつの女は誰だよ!」「バカ女!」罵声は続き、母親が慌てて娘を連れ出しました。
その日、彼が帰宅すると、家に簡易仏壇が。必死にお経をあげる母親。冷蔵庫は空っぽ、食べ物は床に汚く散らばり、彼女の大好きなディズニーのぬいぐるみは食いちぎられ、○○は?と妻のことを聞くと、父親が連れ帰り、その隙に仏壇を設置した、とのこと。しかし、これがいけなかったのです。父親だけが違う宗教の信仰者で、動物の邪霊を刺激しました。
動物の邪霊に憑かれ、性格までもが激変を
娘は実家に着くなり冷蔵庫の中身から火の通ってないものまで貪り、父親を信じられない力で叩き飛ばし、それから恥ずかしい言葉を並べ立て全裸になり、窓から外に出ようと。抑えた父に彼女は急に泣き崩れ「私は悪くない」、「あいつの子どもなんて死ねばいい!」、なんと恐ろしい、神様の整わない家族の悲劇。母親側の宗教に特に問題があり、父はそれを感じ入信しなかった、と。
娘は完全に狐憑き。母親は動物の邪霊に憑かれ、頼りは父親でしたが「業」が深く、夫は低級霊に憑りつかれたまま。わたしは全国でも有名な神社が近くにあるのでお祓いに、と言いましたが「私たちには神様がいるから」と拒絶。結局この家族は救済が間に合わず、それぞれ離別しました。1歳だった子どもは急死したそうです。